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虐待と脳 回復の手立ては

2017年9月23日

二次障害

子育て

愛着障害

こんにちは。
広島で行動理論に基づき子どもをあたたかく育てるコツを
お伝えしている中谷美佐子です。

さて、福井大学の友田明美教授が愛着障害について
NHKの解説委員室で書いていらっしゃる内容が
子どもを育てる上でとても重要で
広く知ってもらう必要があるため
記事をそのまま引用してこちらでも紹介します。

以下からは、NHKの解説委員室で
福井大学 友田明美教授が書かれたものです。
——————————————————————–
愛着・アタッチメントは、子どもの発達にとって、
とても大事なことです。

愛着には3つの方法があります。
目と目で見つめる、手と手で触れあう)、
そして、微笑むことです。

子どもが養育者から愛情をたっぷり受け取ることで
安定した愛着が定着し、養育者は子どもにとっての
「安全基地」となります。

虐待やネグレクト(育児放棄)などの不適切な養育は
愛着障害を引き起こします。

日常的に養育者が子どもに暴言虐待や
長期的な厳格体罰を与える、
そうすると不安定な愛着が形成されてしまいます。

養育者が外に出かけようとした時に、
子どもは後追いもせず泣きもしません。

養育者が戻って来たときも同様で、
子どもは喜びもしないどころか、そっぽを向いたままです。

このように不適切な養育が引き起こす愛着障害は、
こころの発達に問題を抱え、さまざまな症状を表します。

症状が内向きに出ると、他人に対して無関心になったり、
用心深くなったり、イライラしやすくなったりして、
他人との安定した関係が築けません。

症状が外向きに出ると、多動で落ち着きがなくなったり、
友達とのトラブルが多くけんかが絶えません。
また、礼儀知らずとなり、
対人関係に支障をきたしてしまいます。

実は、虐待などが原因で、社会的養護を受けている
子どもたちの40パーセントに愛着障害が発症する
ことがわかってきました。これは、大変な数字なのです。

子ども時代の虐待の影響で、精神を病む人が増えます。
うつ病、アルコールや薬物の依存症、
PTSD・心的外傷後ストレス障害、統合失調症、
さまざまな人格障害を発症することがわかっています。
そして、本人や家族を苦しめるのです。

虐待の被害者は虐待を受けた子どもや家族だけではありません。
その苦しみは他人、そしてまわり回って
私たち社会に影響を与えます。
もしかすると、被虐待者がイジメをするようになり、
自分の子どもが被害を受けるようなことが
起きるかもしれません。

たとえば、社会に適応できずに経済的に困窮する人が増えたり、
精神を病む人が増えることで、生活保護費や医療費の
負担が増え、日本経済の悪化を招きます。

児童虐待によって生じた社会的な経費や損失が、
1年間で少なくとも 1兆6千億円にのぼることも
わかってきています。

この他に、心疾患や肺癌にかかるリスクが
生涯で3倍にも高まり、
寿命がなんと20年縮まることも知られています。
もはや、個人の問題ではなく社会全体の問題となっています。

実は大量のストレスホルモンが脳の発育を遅らせるのです。

幼児期に虐待ストレスを受け続けると、
脳の中にある感情の中枢である扁桃体(へんとうたい)が
異常に興奮し、副腎皮質にストレスホルモンを
出すよう指令を出すのです。

そうするとストレスホルモンが過剰に放出され、
脳にダメージを与えるのです。

アメリカのハーバード大学との共同研究でわかってきたことは、
感情をつかさどる前頭葉が小さくなって、
自分のコントロールができなくなり、凶暴になったり、
集中力が低下したりします。

暴言虐待により聴覚野が変形し、聴こえや会話、
コミュニケーションがうまくできなくなったりします。

両親間のDV・家庭内暴力を目撃すると視覚野が小さくなり、
他人の表情が分かりにくくなり、
対人関係がうまくいかなくなったりします。

脳の形が変わるのは、
「外部からのストレスに耐えられるように情報量を減らす」
ための脳の防衛反応だと考えられています。

私たちの国内研究で分かったのですが、
愛着障害がある子どもでは、本来なら無邪気に喜ぶ、
おこずかいにさえも反応しなくなり、
普通の子ども以上に、ほめ育てをしないといけないことが
分かってきました。

しかも1歳ごろに虐待を受けると、
ご褒美への脳活動がもっとも低下することが分かりました。
いかに早い時期に虐待・ネグレクトを
防がないといけないかを物語っています。

実は、子どものときに虐待ストレスを受け続け、
大人になって親になった時、
今度は我が子に虐待・ネグレクトを繰り返してしまう
世代間連鎖が起きることがあります。

この虐待・ネグレクトは次世代に連鎖するのです。

こういう仕事をしていると多くの方から
「虐待を受けて、脳のダメージによる苦しみについて、
その原因やしくみについて、明らかにしてくれた」と
感謝の言葉をいただき、こんなにうれしいことはないです。

たとえば、61歳の女性ですが、ご主人が被虐待者の家族からは
「世の中このような人々がたくさんいるんじゃないかなあと
思っています。先生、私も自分の気持ちに整理がつきました。
60歳を過ぎてやっと安心して生活できます。」
と書いてありました。

ご主人は今でもうつ病を患っておられるそうです。
また、自らも被虐待経験をお持ちの30代女性からは、
「このように一般にも広めていただき、
子どもの頃、被害にあって今も苦しんでいる者として、
うれしいです。」という言葉を頂きました。

もちろん、こういった虐待を受けた人でも、
回復の道はあります。

脳は20代後半まで成熟が続くため、適切な心理治療、
たとえば、トラウマの治療や認知行動療法などがあるのですが、
こころのケアで、傷ついた脳は癒やされるのです。

ここで、考えてみてください。
このような人たちを増やさないようするには、
私たちはどうしたらいいでしょうか?
いい日本語がありますよね、
「おせっかい(お節介)」です。
そうです、「おせっかい」が子どもを救うんです。

これは東京都の児童虐待防止啓発のキャラクターです。
このように、もうすでに、お節介に活動をしている人がいます。
子どもたちや子育て困難な親に無関心でないことが一番で、
皆さんが養育者支援の主役になるのです。

子どもは実の親だけでなく社会で育てていく視点で、
近所の子どもたちに愛情のある語りかけをしたり、
子育て困難な親に寄り添ったり、
こういった家庭の情報を多機関につなぐ、
こういうことで虐待の連鎖を断ち切ることが
できるかもしれません。

もちろん、ひとりのお節介ではだめで、
皆でお節介をやかないといけません。

現在、どうやったら養育者に上手にお節介をやけるかと、
分野を超えた仲間と研究をしています。

「学校、法律、施設、警察、研究、医療、
そして地域社会が子どもの養育環境を守る」という、
多領域と連携した研究に取り組んでいます。

「虐待を防ぐ方法」だけではなく、
「子育て困難に対する対策」を仲間とともに
提案したいと考えています。

虐待さえしなければ「子育て困難でもいい」とは
言えないからです。

政府が子どもたちにお金をかける場合、
学童やそれ以降にかけるより、
乳児期にかけたほうが、費用対効果が高い、
言い換えると養育者支援にもっとお金をかけたほうが
効果的です。

起こった犯罪に対して厳罰を与えたり、
病気になった人を治療したりするより、
養育者支援の方がずっと高い効果が出ています。
それだけ、社会の苦しみも減ります。

子どもたちの笑顔を取り戻すためにも、
そういった子どもたちや子育て困難な親に対する
周囲の支援の必要性を提言します。

だからこそ、皆さんひとりひとりが児童虐待に無関心にならず、
養育者支援の主役として、
できることからアクションを起こしていただきたいと思います。

親が子どもを虐待する世の中、
社会のシステムを変えなければいけません。

それは、皆さんひとりひとりの行動にかかっていると思います。

NHK解説委員室 開設アーカイブス「虐待と脳 回復の手立ては」
2017年3月6日(月)から引用

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発達障害に気づかないまま、育つとどうなるか?

2015年8月24日

二次障害

発達障害

行動理論に基づき、子育てのコツをお伝えしている
特別支援教育ジャーナリストの中谷美佐子です。

取材をしていると、こんなお話をよく聞きます。
代表的なものを以下にまとめてみます。

「小学4年生頃から、私のことを、クソババアと呼ぶようになって
殴る・蹴るの暴力をふるうようになりました」

「小学6年生あたりから、家の中をめちゃくちゃにして
物を壊すようになりました。もう家庭は崩壊しています」

「小学3年生のときに、いじめにあって、それから不登校になり、
現在、18歳ですが、仕事をする気がなく家でビデオばかり見ています」

「中学生になってから、学校へ行くと腹痛や頭痛が出るようになって、
早退して帰宅してからも激しい痛みに狂い続けていました。
どこの病院に連れて行っても異常なしで、対処のしようがなく
しばらく、毎日、精神安定剤を飲んで家で寝ていました。
ようやく学校に行けるようになったら
今度はいじめにあって、今では毎日「死んでやる~」と叫んでいます」

「小学5年生から不登校、そのまま、ひきこもりになって、
18歳くらいからバイトに行くようになったのですが、
どうも人間関係がうまくいかないようで、バイトを転々としています」

「小学校の高学年ごろから、学校の先生が悪い、
親が悪い、周りにいるやつらは皆おかしいやつらばかりだと言うようになりました。
私(母親)が何を言っても、おまえが言っている意味が分からん、
もっと分かりやすくしゃべれ!と怒ります。
白か黒かはっきりしろ!白でも黒でもないようないい加減な話はするな!と
怒り狂います。私の育て方が悪かったのでしょうか?」

皆さん、とっても困っていらっしゃるということは本当によく分かります。

本人も家族も何が原因で家族がこんなにも苦しくなってしまったのかが
分からないのですね。

実は、この苦しみの原点は
本人も家族も学校も地域社会も
発達障害への特性理解がなかったということだろうと
私は思っています。

その理解がなかったために、
本人に普通に(多数の人達のように)なるように
強要してしまったということです。

人はみんな感じ方や受け止め方が違うということを
互いに認めてこなかったというか、、、
どういった部分が互いに違うのかを
具体的に誰もが知らなかった、、、ということでしょう。

今からでも遅くありませんから
発達障害について勉強していけばいいのですよ。

そのためには、まずは「障害」に対する考え方を
「違い」として捉えることから始めることをおススメします。

そうしないと、「自分の子どもに障害があるのは嫌だ」となってしまうでしょ!?

何度も言いますけれど、
「障害」はその人の中にあるのではなく
人と人との間に「違いを認め合うことができない障害=障壁」があるのですよ。

勉強して、発達障害への特性理解がすすめば
互いにやさしくなれると思います。

人は相手を普通だと思っているから
(自分と同じだと思っているから)
怒りやイライラが出てきて、
ぶっちぎれてしまったりするのです。

自分がぶっちぎれたときは
「あれ?今、私が怒っているのは、ひょっとすると
発達障害について理解できていないのかも!?」
と思うようにするといいかもしれませんね。

そうすると、怒りがスーッとなくなるかもしれませんよ。

発達障害のある人達は広範囲に渡って
不具合や困難さがあり、本当に苦しんでいますから
まずは、私達が彼らの苦しみを理解することで
穏やかな生活が始まっていきます。

では、発達障害の人達はなぜ暴れるのか?
なぜ自暴自棄になってしまうのか?を理解するために
当事者のブログを読んで、まずは彼らの気持ちを理解していきましょう↓
「発達障害な僕たちから」

9月13日(日)LSA(学習・発達支援員)養成講座の記念講演会を開きます。
学校関係者、児童デイ、家庭教師、塾講師、
子育てが一段落した保護者の方々、ぜひ、ご参加ください。
お申込はこちらからです↓
NPO法人日本インクルーシブ教育研究所

性格だと思っていたのに…発達障害だった!?

2015年8月13日

二次障害

発達障害

行動理論に基づき、子育てのコツをお伝えしている
特別支援教育ジャーナリストの中谷美佐子です。

近年、うつ病だと思って心療内科に行き、
実は、ADHDだったとか、
自閉スペクトラム症だったという人が増えています。

発達障害をあまり専門としていない
心療内科や精神科を訪れた場合は
うつ病だけでなく、パニック障害や不安障害、統合失調症などと
診断されることもあるようで、、、
「もう何年も薬を飲んでいるのですが、一向によくならないんです。
ますますひどくなっています」というお話もよく聞きます。

おそらくベースに何らかの発達障害があって
その特性についてご本人も周りも理解がなかったために
二次障害となっているのかもしれません。

もともと発達障害というのは、障害というよりも
脳機能の働き方が一般の人達とは違っているため、
物事の受け取り方や捉え方が多数の人達とは違います。

その違いを「自分はおかしい」「自分はダメな人間だ」と思って
周りに必死で合わせて生きていると、
どうしても苦しくなってきて、不具合が生じるということです。

また、周りの人達も発達障害の人達への理解がないと
(相手が自分と同じだと思って接していたり、
自分と他者が違うということの理解がないまま接していると)
怒りやイライラが出てきて、
「なぜ?できないんだ」「どうして?そうなんだ?」等と
他者と自身との違い(違和感など)に
苦しんでいる人たちを責めてしまいます。

同時に、本人も自身について気づきや理解がうまくできていないと
他者に「あなたが分かりやすく説明しないから、私が理解できないんだ」とか
「上司や部下がダメ」「私はちゃんとやっているけれど、周りがダメ」等と
人のせいにするようになっている場合もあります。

客観的に自身や周りの状況を見ることに困難さがあり、
自身や他者を理解する(気づく)力が弱いことに原因があります。

そうすると、だんだん攻撃的な訴えが増していくこともあり、
家庭内暴力に至っていることも間々あります。

これらを二次障害と言うと分かりやすいかもしれませんね。

じゃ、どうするか?ですが、
まずは、発達障害について詳しい専門医に行くということです。

そして、自身の得意なところと、苦手なところを知って、
工夫の仕方を身につけていくといいわけです。

ご本人だけでなく、ご家族も一緒に専門医のところへ行き、
共に発達障害について学びあう姿勢が大切だと思います。

平和な暮らしが訪れるのは、まずはそこからのように思います。

もう少し詳しく「二次障害」について知りたい方は
こちらかをお読みいただくといいでしょう↓
朝日新聞の医療サイト[健康・予防]
うつ病だと思っていたのにADHDだった!?

9月13日(日)LSA(学習・発達支援員)養成講座の記念講演会を開きます。
広島初の養成講座スタートを記念しての講演会です。
詳細はこちらからご覧ください↓
NPO法人日本インクルーシブ教育研究所

ADHDの子を鬱にしない接し方

2015年6月23日

二次障害

発達障害

小学低学年くらいから
小児性のうつ病にかかっている子どもが
結構な数いるように思っている私です。

私達大人が子どものことをよく分かっていないまま
子育てしているのが原因かな?と思ったり、、、

「何で、そんなこともできないの!」と怒りそうになったら、

「どうして、できないんだろう?」と疑問を持つと
子どもがどうしてできないのか?見えてきますから
手助けしてやれます。

「早くしなさい!」と怒りそうになったら、

「時間の感覚が違うのかな?」と思ったり、
「私は子どもよりも何倍も長く生きてきたから
同じことを何度も経験して
早くできるようになっているけれど、、、
子どもはまだ生きてきた年数が短い。

だから、今、子どもは練習中!
早くできなくて当たり前よね」なんて
思ってみるといいかもしれませんよ。

「何で」「どうして」「早く」、、、

毎日毎日、怒られっぱなしの子ども達の気持ちに
ちょっと寄り添っていただけるとうれしいです。

怒られることが多いADHDの子ども達を
鬱にしない接し方について、
こちらから学ぶことができま~す↓
アメーバニュース
頭ごなしに叱っちゃダメ!
ADHDの子どもを鬱にしない接し方